2025年6月19日
<要旨>
ローム株式会社(本社:京都市)は、民生、産業機器向け電源で広く使用されている電流臨界モードPFC(Power Factor Correction)*1と疑似共振フライバック*2の2種類のコンバータを1つのマイコンで制御するリファレンスデザイン「REF67004」を新たに開発しました。ロームの強みであるシリコンMOSFETなどのパワーデバイスやゲートドライバICで構成されたアナログ制御パワーステージ回路と、低消費電力のLogiCoA™マイコンを中心としたデジタル制御電源回路を組み合わせたアナログ・デジタル融合制御技術による「LogiCoA™電源ソリューション」を提供しています。
今回リリースする「REF67004」は、AC入力を電流臨界モードPFCコンバータで昇圧した後、疑似共振フライバックコンバータでDC 24Vを出力するリファレンスデザインです。外付け部品における特性の「バラツキ」を補正するキャリブレーション機能を備えており、LogiCoA™マイコンが高精度で各種電圧設定や過電流保護を行います。これにより、電源の設計マージンを小さく見積もることができるため、より小型(低電力)のパワーデバイスやインダクタを選択可能となり、電源の実装面積削減やコスト削減に貢献可能です。
また、「REF67004」は、ログ保存機能により、LogiCoA™マイコン内蔵の不揮発性メモリに入力電圧、出力電圧・電流、温度などの動作履歴、停止直前の動作状態および累積稼働時間を保存できます。これらのデータを解析することで電源の故障原因を容易に特定することもできます。なお、電源のさまざまな制御パラメータや動作履歴は、ローム公式Webサイト上で公開している電源制御用OS「RMOS(Real time Micro Operating System)」を含むサンプルプログラムなどを使用することで、PC上からUART(信号変換機器)経由で容易に設定・取得できます。さらに、リファレンスデザインボード「LogiCoA003-EVK-001」(サンプル価格100,000円/個:税抜)を使用することで実機評価も可能です。
LogiCoA™マイコンは、2024年6月より量産(サンプル価格650円/個:税抜)しています。
<背景>
小~中電力帯で動作する産業用ロボット機器や半導体製造装置等では、一般的にアナログ制御電源*3が広く採用されています。しかし、近年ではこれらの電源にも高い信頼性や細かい制御が求められており、アナログ制御のみの電源構成では市場要求に対応することが困難です。一方、フルデジタル制御電源*4は、細かい制御や設定が可能な代わりに、搭載されるデジタルコントローラの消費電力が大きいことやコストが高いという問題があり、小~中電力帯の電源においては採用が進んでいません。
この課題に対してロームは、アナログとデジタルの長所を融合したLogiCoA™電源ソリューションを高機能かつ低消費電力のLogiCoA™マイコンとともに開発し、さまざまな電源トポロジー*5を容易に制御できる環境を提供します。その第1弾として、非絶縁バックコンバータの回路でLogiCoA™電源ソリューションを体感できる評価用リファレンスデザイン「REF66009」を公開。さらに第2弾として、民生、産業機器で多く使用されているPFCとフライバックの2つのコンバータで構成された電源のリファレンスデザイン「REF67004」の提供を開始しました。今後もさまざまな電源のリファレンスを提供し、お客様の電源開発に貢献していきます。
<「LogiCoA™」ブランドについて>
LogiCoA™は、ロームが得意とするアナログ回路の性能を最大限に発揮させるために、デジタル要素を融合する設計思想に対して付与されたブランドです。アナログ回路のメリットとデジタル制御のメリットを融合することで、回路トポロジーの潜在能力をフルに引き出し、電力活用の高効率化に貢献します。ロームは、このLogiCoA™を電源分野のみならずパワーソリューション全体に適用できる設計思想と考えており、今後の製品及びソリューションへの応用を視野に入れています。
・「LogiCoA™」は、ローム株式会社の商標または登録商標です。
<LogiCoA™電源ソリューション特設ページ>
ロームの公式Webサイトにて、LogiCoA™電源ソリューションの基本構成や特長などをご紹介しています。
https://www.rohm.co.jp/support/logicoa
<LogiCoA™電源ソリューション リファレンスデザイン ラインアップ>
ローム公式Webサイト上では、サンプルソフトウェアの他に、評価に必要な回路図、PCBレイアウト、パーツリスト、サポートドキュメント等の各種ツールを公開しており、さらにリファレンスデザインボードを使用することで実機評価が可能です。今後、さまざまな電源トポロジーに対応できるようにリファレンスデザインを拡充していきます。
●リファレンスデザイン品番
・PFC+フライバックコンバータ:REF67004
・バックコンバータ:REF66009
リファレンス デザイン品番 |
REF67004 | REF66009 |
---|---|---|
デザイン名 | LogiCoA™電源ソリューション PFC+フライバックコンバータ (AC:85V~264V入力 DC24V出力) |
LogiCoA™電源ソリューション バックコンバータ (12V入力 5V出力 25W) |
搭載LogiCoA™ マイコン品番 |
ML62Q2035 | ML62Q2035 |
リファレンス デザインボード 品番 |
LogiCoA003-EVK-001 |
LogiCoA001-EVK-001 |
<LogiCoA™マイコン ラインアップ>
タイマー連携可能な3chのアナログコンパレータや各種パラメータのデジタル制御が可能となるD/Aコンバータ等を搭載し、さまざまな電源トポロジーに対応できます。
品番 | データ シート |
動作 電圧 |
温度 | タイマー | コンパレータ | A/D コンバータ |
D/A コンバータ |
プログラマブル ゲインアンプ |
CPU | メモリ | パッケージ | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Code Flash |
Data Flash |
RAM | |||||||||||
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4.5V ~ 5.5V |
Ta= -40℃ ~ +105℃ (Tj=+115℃) (絶対最大定格: Tj Max. =+125℃) |
16bit timer with PWM/Capture × 6カウンタ、10出力 最大64MHz動作 (分解能15.625ns) |
3ch (クロック 非同期動作) 応答時間: Typ.100ns |
12bit SA-ADC: 5ch |
8bit、 2ch |
1ch、 ゲイン設定: 4レベル (×4/×8/ ×16/×32) |
16bit RISC CPU Core (U16)、 最大 16MHz 動作 |
16KB | 4KB (消去 単位: 128B) |
2KB | TSSOP20 |
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32KB | |||||||||||
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16bit timer with PWM/Capture × 6カウンタ、13出力 最大64MHz動作 (分解能15.625ns) |
16KB | WQFN24 |
|||||||||
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32KB |
<LogiCoA™マイコン開発支援システム>
LogiCoA™マイコンは、ロームオリジナル16bit RISC CPU Coreを採用しており、ローム提供の統合開発環境、およびエミュレータが利用可能です。
なお、下記ローム公式Web上のLogiCoA™開発支援システムページにて、LogiCoA™マイコンの開発支援システムの構成や各製品の概要を紹介しています。
https://www.rohm.co.jp/lapis-tech/product/micon/logicoa-software
<アプリケーション例>
・産業用ロボット機器 ・半導体製造装置 ・アミューズメント機器
ほか、一般的な産業機器、民生機器(約50W~1kW)に幅広く搭載可能です。
<用語解説>
- *1)電流臨界モードPFC(Power Factor Correction)コンバータ
- スイッチング電源において、交流(AC)を直流(DC)に変換した時の電力の力率(供給された電力のうちどれくらいの電力が有効に働いたかを示す指標)が非常に良く、電流連続モードPFCよりノイズの発生量が少ないAC-DCコンバータの回路構成のこと。力率が「1」の場合、供給された電力がすべて有効に働いたことを示す。
- *2)疑似共振フライバックコンバータ
- DC-DCコンバータ回路構成の一種として絶縁電源の構成に使用され、疑似共振方式によりスイッチング損失やノイズを低減することができる。100W程度までの用途に適し、部品点数やコスト面に優れる。他にフォワード方式などがあり、これらを構成するデバイスの進化が絶縁電源の小型化・高効率化を実現している。
- *3)アナログ制御電源
- アナログ部品で構成されたシンプルな電源構成。電源構成がシンプルな上に消費電力も少ないため、現在1kW以下の電源においては主流の電源構成となっている。一方、任意のパラメータ設定やログデータの記録等、高機能の実装は難しいため、これらの機能を実現したい場合、コスト及び消費電力の大きなフルデジタル制御電源の検討が必要となる。
- *4)フルデジタル制御電源
- デジタル技術を活用して電力供給を制御する電源のこと。高速CPUやDSP等を使用して、電圧や電流などの各種パラメータを精密にモニタリング、制御できるため、電源の効率性、信頼性等の向上が可能となる。また動作ログデータの取得等、アナログ制御電源では難しい機能も実現できる。一方、CPUやDSPは高価かつ消費電力が大きいため、コスト面や省エネの観点ではこの点が課題となる。
CPU:中央制御装置。プログラムを実行し、データ処理を行う中核的なプロセッサ。
DSP:デジタル信号処理装置。アナログ信号をデジタルに変換し、フィルタリングや増幅などの処理を行う。 - *5)トポロジー
- 回路構成のこと。電源トポロジーは、電力を変換するための回路構成であり、入力電圧や出力電圧、電力、絶縁の有無など要求仕様により回路構成は異なる。
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